白洲信哉 SHIRASU SHINYA OFFICIAL WEBSITE


平成26年10月15日(水)  |固定リンク

  東京国立博物館
「日本国宝展」より 
薬師寺 女神像

 昼に「日本国宝展」取材のあと雅展に行く。皇帝の眼、を再び確かめに。品格を再認識する。昨晩はワグナーの「パルジファル」2度目の観劇。新劇場の細川かほりさんが、初日のあと送ってくださった。

 ●「パルジファル」舞台装置の裏側をご紹介!(新国立劇場ホームページ記事)

 オペラのこと知らないけど、ただただ美しいと思っていた舞台の、舞台裏のことを読むと、映像担当者が「2階席からの光の道が美しい」と最後に話されていた。なるほど、そういうことがあるものかと思って、最終日に行く事にする。

 2度目ということもあり、ちょっとは音楽を聴く余裕ができたことと、席によりこれほど見え方が違うものかと思った。「光の道」は白く、ときには赤や緑に変化するのだが、舞台の大きさを感じるには、確かに2階席以上なんであろう。見所はやはり3幕目で、厨子にみたてた僕には縄文土器にしかみえない幕がおりて、壮大な画面装置と荘厳な音楽がピタットあって繰り広げられる場面からだと思う。天につながる現世への道はますます白さを増し、僕には飛行機のコンコルドにみえるあの世への棺が、赤く、「ああ あれは装飾古墳のような石室内部なんだ」と思えてくる。白と赤は玉石の白と、朱の僕らの古来からある色彩感と重なり(これは最初からそうなのであるが)、おそらく演出家クプファーの美的感覚を、僕は好きなんだと思う。葬送儀礼と救済の物語は、最後に救済されない多くの人がいると初日のあとに書いたが、「安全安心な社会」と空想的な言葉を並べている現代の政治家より現実的で、またそれが社会なんだ。多くのメッセージを受け止めて、血である葡萄酒と肉であるパンを夜食に食べた。


  展覧会入口の
仏足石


  展覧会目玉
のひとつ
安倍文殊院
最新一括国宝





平成26年10月4日(土)  |固定リンク

 


 自然の演出と人工美、その余韻にひたる週末だ。

 1日に落慶法要が行われた宇治 平等院に月曜日お邪魔した。旧知の神居住職と日の出の時間を共有する。構想10年、平成の大修理は住職ご努力の賜物である。朱の色、屋根の瓦、見えない部分のこと……あげたら切りがないが、平安美の極致である。奇跡と言ってもいいと思う。以前夏至の頃、日の出に立ち会った事があるが、鳳凰堂の阿弥陀さまに池に反射した日があたり、お堂の内部がゆらゆらと揺れていた。今回は修理後ということもあり、お堂の扉は閉まっていたが、鳳凰から徐々に下のほうへ、朝陽が当たってくると、お堂全体に血が通ってくるように、だんだんと大きく美しく、大空に飛びたっていくように見えてくる。全体のデザイン性とそれを支えた技術、平安の貴族文化はたくましく力強い。日の出を計算し、朝日山から昇り、お堂の裏に日が沈む。極楽、宇治の阿弥陀堂に参ろう。と信じた人々が、戦火など数々の苦難から護ってきたのだと思う。自然光の演出にかなう美はない。

 2日、新国立劇場に「パルジファル」を観劇。すごいものをみた。日本でオペラをみるのは(と言っても海外でもみたうちではないけど)初めてで、御一緒した小川榮太郎さんが、「それは無謀でしょう」と笑う。オペラのことは初心者だが、言葉がわかる上に、美しい舞台演出に僕は感動した。何万個のLED照明はスイス製、何トンもの重量を一点で支えた演出など、劇場の細川プロデューサーが教えてくださったが、こういう装置は海外で生産され輸入したほうが安くつくのだという。クプファーという方の演出だと聞かされたが、僕にはあまり意味のないことだ。いつも青白くモノがよく見えないはずのLEDが、音楽とすっきりとした白はピッタリ合っている。ときどき赤色になったり緑に変化したりするのだが、ずっと見ていると、これは相性なんだと気づいた。石とLEDの光 これはつめたい色が合うのであって、木の国には自然の暖色が必要なのだ。風土というのか、LEDのつめたい街並は湿潤な我が国には不似合いなのだと思う。さきの平等院で感じた光には飛天の音色が、人工美にはワーグナーが、なのだ。聖杯には赤の葡萄酒が、我が国の酒は白色、清酒というのも理にかなったことなのかもしれない。救済の物語なのだというが、救済されない人もいて、葬送儀礼は悲しく美しかった。元来、耳が悪い僕には、もしかしたらオペラはいいのかもしれない。

 江尻さん、御陰さまで素敵な時間がもてました。


 



 



 






平成26年10月1日(水)  |固定リンク

 

目の眼」11月号、本日発売です。今回は、2014年5月号の瀬戸に引き続いて、六古窯の雄、備前焼を特集します。当地の美術館や研究者、備前焼を現代に継承する陶芸家、古美術商などを訪ね、初公開も盛りだくさんの古備前コレクションを紹介。陶芸だけでなく、刀剣やガラスの名産地として知られる滋味豊かな備前の街の魅力も紹介いたします。





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