白洲信哉 SHIRASU SHINYA OFFICIAL WEBSITE


平成21年9月29日(火)
「目の眼」11月号“特集 根来 赤×黒”で、ロンドンギャラリーの田島氏と対談しました。
また、本日「徹子の部屋」(9月29日:午後1:20〜1:55放送:テレビ朝日から全国24局に同時ネット)に出演します。







平成21年9月29日(火)

 二上山
 落日

 東京へ戻る。あまりの慌しさに一日動いてはいるがボーとしている。金曜日、やっぱり納得が行かないので、野呂さんと新ノロ駅近くの「定点」で待ち合わせ二上山の夕日に再度いどむ。定点とは我々だけがしっている観測ポイントで、振り向けば三輪山がみえる東西直線上にある。春と秋の彼岸 この辺りから山の真ん中に日が沈む。という。確かめないと書けないのである。

 京都で近鉄線の切符を買うときに「新ノロ駅」まで というとそんな駅はないという。カタカナの駅で?と繰り返すと「西ノ京」ですかと?いやいや、と地図を見せて貰い「新ノロ駅」を指差すと、「ああ イノクチのことですか」という。ノロはカタカナでなくて ノはノだけど ロではなく口だそうだ。わかりますか?この名前に縁を感じて、野呂さんとその場所に決めたのに・・・・。

 名古屋に戻り翌日福森邸へ。週刊ポストではこの二年、福森さんにお世話になった。これが最後の撮影である。秋の七草を福森流に活けて頂く。いつものように囲炉裏に座ると、どこかで見た人が入ってくる。花政のご主人藤田さんである。どうもバーの主人という印象なのだが、江戸時代の文久年間創業の老舗の花やさんで、その活ける花を摘んできてもらう。はじめてみる本業の藤田さん。お陰で時期遅れの七草もそろう。

 そしていつものように、宴会がはじまり11時からラフロイグの封を切りいい感じになる。翌朝どこかで見たことある部屋の風景で、フロントに電話して確かめると「京都のフジタホテルです」という。あらら、またやってしまった。そう言えば酒を呑めずに我慢していた藤田さんに乗せられて京都へ来て、文久の早坂さんを連れまわし飲んでいたような?曖昧なことがありポストの中島さんに電話するがでない。続けてライターの酒井さんに電話すると「止めたのに乗っていったんですよ」と。ここは古都逍遥という連載の定宿なのであった。

 ただ都合いいということもあり、日曜日は六波羅蜜寺の川崎ご住職と、法金剛院の川井ご住職に面会することができた。京都は蒸し暑かった。


 秋の七草
 





平成21年9月28日(月)
週刊ポストに、“白洲信哉 続ニッポンの流儀 特別編 〜ロンドンで感じた日本の美〜”と、“古都逍遥・庭園に遊ぶ”が掲載されました。





平成21年9月23日(水)

 天河弁財天
 

 平等院の神居ご住職と学芸員の谷本さんのご好意で、朝五時から朝焼けの鳳凰堂を凝視する。あれをなんと表現したらいいのか?これは後日、家庭画報に書きますが、一生の記憶に残る光の芸術だった。カメラを修理に出しているので写真はないけど、でもあれは僕の腕では無理かもしれない。太陽と浄土に対しての強い古人の思いが伝わってきた。

 その足で二上山に登る。朝日と落日。ひとつの感覚であり、民族の根幹に似たものだ。登るとのみるのとこれほど似ている山もないように思う。見たままいま何処を歩いているのかも正確にわかるし、大津皇子のお墓もその場所に強い思いがある。久しぶりの当麻寺もよかった。奈良には遠い昔のことを思い出す舞台が満載である。

 長い一日、自分への褒美?京都へ出て「緒方」へ行く。去年独立してから初めてだったけど、かわらずそして熱心にやっている。しずくはとくに嬉しかった。疲れていたこともあるけど、いい酒を浴びる。押鐘さん、野呂さんに見捨てられ?「文久」で藤田さんに拾われる?この辺りは記憶乏しく、翌日、藤田さんから電話があり驚いた。仕事の話をしていたようである。自分でも感心するくらい仕事熱心だ。藤田さん、深謝!

 翌日は瀧蔵神社、そして初めて天河弁財天へ行く。NHKの川良さんとも久しぶりによく話す。同じ視点でものを見ている人に会うのは楽しい。かれの紹介もあり、弁財天の柿坂さんにも話しを聞いてもらう。本殿前の能舞台は新しいが雰囲気一杯だ。やっぱり聖地というのは同質のなにかがある。11月の奉納能を一度は見てみたい。

 東京に戻りサントリーホールの西本智美さんのコンサートへ。指揮者のコンサートというのも変な感じだけど、ロイヤルフィルとの呼吸よく、マーラはよかった。古都逍遥の撮影以来のお付き合いだけど、音楽音痴にはいい教師である。また聞きに行こうと思う。

 その足で軽井沢に来た。メールを送る通信を忘れてしまい更新も遅れてしまう。中島さんからのメールも、油井さんへの連載の確認も遅れてしまい申し訳ない。週末は福森邸へ。旅は続く。


 当麻寺
 


 宇治川
 





平成21年9月17日(木)

 続石
 

 遠野から戻る。昔話に埋もれた町は想像以上だった。曲がり家、続石、オシラサマなど祭りの合間に見て回る。ただ、カメラの液晶が壊れたのが残念だ。

 鳩山内閣が発足。いい顔ぶれだと思うが、脱も主導もないのである。官僚だって国民である。でも期待したいと思う。とくに厚生大臣に。気がかりなのは連立で仕方なくいれた党首である。前の党首が落選したような政党に振舞わされるのは如何なものか?衆院で多数があるのだから、参院の運営は来年の選挙まで我慢してもよかったのかもしれないとも思う。この際だからそれを含めことを運べばいい。官から民への基本的なことは、この前の選挙で多くの国民が支持したことであるし、その方向は総意に近いものであると思う。これを誤るといけない。どうもあの改革が、いまの不況の元凶といういいかたをするがそれは断じてない。経済はグローバルのなかで生きていくしかないのである。なんでも便利とか公平性をもとに議論するが、都会と田舎は違うのは当たり前だし、不便だが空気がいいとか、住み易いとか経済的な価値観だけで計れないことも多いのである。違いこそ文化である。

 明日からまた旅に出る。平等院の夜明けが楽しみだ。


 八幡宮での
 最後の舞


 流鏑馬
 





平成21年9月15日(火)

 朝、遠野八幡宮を
 出る獅子

 一日遠野を歩く。まず、朝神事が行われる遠野八幡宮へ行くと祭りの準備は整っていた。ご神体を神輿にうつし、街を練り歩きながら家々の前で獅子踊りが奉納される。さすがに神事とセットなのでありがたみもある。小休止になったところで、卯子酉神社、五百羅漢、早池峰神社、山崎金勢さま、松崎観音と駆け足でまわる。さすがに鈴木理策さんの推薦だけあり、遠野を理解する上で欠かせないポイントだった。少し考えてポストに書こうと思う。

 夕方、神輿一行は伊勢両宮神社に到着し最後の力を尽くし舞う。今日はここで一晩かみさまはお過ごしになる。明日の朝ここから出発するのである。秋晴れの美しい山里だった。明日も楽しみである。


 祝儀をくわえた
 獅子


 高清水から見た
 遠野盆地


 卯子酉神社
 


 五百羅漢
 


 五百羅漢
 


 早池峰神社
 


 早池峰神社
 


 最後の舞を
 終えた獅子


 太田カメラマンの
 迫力に押されて
 整列する獅子


 伊勢両宮神社に
 着く獅子





平成21年9月14日(月)
週刊ポストに、“白洲信哉 続ニッポンの流儀 第35回 〜日本の旅館〜”が掲載されました。





平成21年9月14日(月)

 遠野八幡宮
 鳥の舞

 夏のほとんどは軽井沢、一週間欧州にいたのでバタバタ過ごす。木曜日はMHDのイベントに増上寺へ行く。亀井広忠くんらが中心になって能、歌舞伎、日本舞踊が混在した面白い催しものと、金田中の和食とOLD PARRをあわせるという一風かわった挑戦である。ちょっと考えて書こうと思う。広忠くんには愚息がお世話になっていて、「十一月まで稽古をやすむ」と言ったのですがどうしたんですかと?仕方がないので、「落第しないように勉強しないと」と本当のことを言ったけど信じてもらえたかな?かれは純粋ないい人である。

 金曜の晩は久々に伊賀肉を食べた。ヒレを福森さんの土鍋で焼くという定番、坂本さん紹介のクロワッサンの取材である。水曜日の晩に食べた四谷・寿司匠の塩〆秋刀魚に触発され試してみる。一時間塩で〆てみたが、なかなか美味くいく。太目の大きな秋刀魚を「銀びろ」と呼ぶ秋刀魚も売っていたので、そちらは刺身にしてみた。塩の力は大したものである。

 土曜はなかなか行けなかった「海のエジプト展」をみに横浜へ。夕方行ったのだが、人の波でどうしようもない。ファラオ像、ハピ神像、王妃像の大きな三体はそれなりだったが、あとは「人の毒?」を浴び気持ちが悪くなる。でも海底の発掘の映像には魅かれるものがあった。確か海底考古学という分野で、僕が受験したころは東海大学にあったように思う。泳げないけど、あんなものが見れるなら潜ってみたい。感動しただろうな。

 昨日から遠野に来ている。東北新幹線を新花巻で乗り換え、一時間かけて遠野駅に着いた。車窓からの風景と「遠野」の響きとともに、その足で遠野八幡宮に。七時からの神事奉納を見る。写真をみてもわかると思うけど、なかなかのものである。ただ、残念ながら観客は少なかった。今年から休日だった15日が休みでなくなり、例年の遠野祭りと一緒に出来なくなったからだという。神社は日を大事にし、市は祭りへの人の集まり易さを優先する。これも全国一律に休みを統一した弊害だと思う。地方にはそれぞれの事情がある。祭日をどう使うかも地方に選択させたらいいのである。残念なことだ。これだけ続いたものが埋もれていく恐れがある。明日からしっかり見ていきたい。

 晩飯を食べていたら茂木さんから電話がある。いまは竹富島だそうだ。去年見た酒井さんお薦めの多良間島の「八月踊り」を思い出す。日本も広い!!!


 恵比寿舞
 登場


 三番叟


 最後に頭を
 獅子にくわえて
 もらう


 ロンドンタクシーの
 茂木さん


 増上寺
 イベント





平成21年9月9日(水)



 パリから予定より一日早く戻る。坂本さんの厳命により「徹子の部屋」の収録に間に合うようにである。黒柳さんは想像通り頭の回転の早いかたで、祖母の正子に「お会いしたかったけど恐れをなしてお会いできなかったのが心残り」と言われる。でものんびり屋の祖母のほうが、恐らくあの早さについていくことはできなかったであろう。

 その前に「目の眼」の取材を、ロンドンギャラリーの白金ギャラリーでうける。亭主の田島さんと「根来」についてはなす。この秋田島さんが中心となりホテルオークラ横の大倉集古館で大規模な「根来展」が開かれる。漆製品にはいろいろあるけど、螺鈿や蒔絵といった神経質なものより、豪快な「根来」がジャパンに相応しいと思っている。いまから楽しみである。

 夜は毎年の恒例「シンコの会」に神楽坂の寿司幸へ。新潮社の祖父の担当者である池田さんが年に一度企んでくださる。主人にその年の最高の時期を尋ねて僕はその日のために体調を整える。寿司というのはやっぱり特別なもので、最上を味わえば回数を求めることもない。ご主人は「信哉さんはお客でなくて敵ですから」と笑って言われるが、僕も勝負をしに暖簾をくぐる。「また来年」と言って店を出る。もっと詳しくは茂木さんの日記を参照ください。



 戻って郵便を整理していたら「VALUES」と「VOLARE」が届いていた。今回は「蕎麦」について書く。最近贔屓の三軒茶屋の「東風」と瀬津くんに器をかりる。一番長くそして毎回心血をそそぐ。

 昨日はギャラリー小柳杉本さんの展覧会へ行く。今年の展覧会でみた雷神の部屋の新作だった。意識的に製作しているというから面白い。夜は瀬津と飲んだ。かれも来月の「桃山展」で頭が一杯である。夢中になって仕事することは美しい!





平成21年9月7日(月)
週刊ポストに、“白洲信哉 続ニッポンの流儀 第34回 〜昆布〜”が掲載されました。





平成21年8月31日(月)〜9月5日(土)

ロンドン・パリ日記

8月31日(月)

 いや、まだ日曜日。なんだよね。不明なくらい長いフライト。パリで乗り換え嫌な予感がしたから、わざわざ念を押したのにやっぱり荷物が出てこない。あのいい加減な、および航空会社の無責任にはあきれる。BAはトランジットの時間がないからだという。3時間もあって、しかも2時間も足止めされた。金返せ と言ったけど「乗ってきた貴方の分だ」とまじめな顔していう。大英帝国はるかなり。

 お陰で「脳のからくり」2度読んだ。竹内薫さんには茂木さんの紹介で一度お会いしたことがある。非常に読みやすく分かりやすい。それをまた意識して書かれている。「脳」の1部、構造はわかったし、クオリア 僕ら古美術の世界で言う「いい味」という位の数式にはなるんじゃないかと思う。魂とか自然が科学と無縁なもんじゃないことを痛感。

 そんなこんなで夜中に到着。パデイントンから乗ったタクシーの運転手、ホテルの地図を渡したら「名前だけ言えばいいんだ」と不機嫌。ロンドンらしく嬉しくおもう。東京じゃ平気で「この辺は不慣れで」という。

 カメラマンの太田さん、編集の渡辺さん、畏友の昭夫、そして眠い目をこすりながら茂木さんもバーで待っていてくださった。そして民主党が300議席を超えたことも知る。長い長い16年。2年はやって貰わないといけない。これからが大変だ。

 そんなわけで彼らを夜中までつき合わせてしまう。晩飯はANAの機内食の素麺、最近飯だけは上達している。たいしたものだ。書きたいことは無限にあるけど朝飯食べてこれからテートに行く。


8月31日(二回目の)月曜日




 開館前のテートギャラリーへ。ターナーをじっくり見る。晩年の「日の出」1850年とあるから亡くなる前の年、ボヤーとした加減がいい。三十歳くらいのははっきり描いているが、1842年頃から色が冴えてくる。画家の眼にうつる具体的な光景が変化したんではあるまいか。画題は関係なくなってもくる。テートを出たら太陽がのぼりいい天気だった。ターナーのような透明感のあるブルー、緯度が高くなると空色は、日本と別色になる。



 気持ちが良いのでトラフォルガー広場をみなで練り歩き、茂木さんの提案でリキッドランチをとる。そんな言葉しらなかった。随分無駄にしてきた昼飯、パブでは初老の紳士が生ぬるいビターで歓談している。僕も昨日飲めなかったビターを注文。男性はハーフを飲まないんじゃないか?と茂木さんがいう。言われてみればそうかもしれないが、人ことをよく観察する人だな。僕は他人が何を飲んだりしているのか、関心が向かない。「ここのビールは何がいいか」品定めするのに意識がいく。お陰でいい昼飯になる。






 すぐ横のナショナルギャラリーへ。ビターのお陰で?眼が冴える?ゴッホの椅子はずっとは凝視できないくらい、かなしい画にみえたし、ドガの踊り子は生活感に溢れている。日常を必死で生きていることが、髪をとく手つきや裸婦の肌にみる。画家の鋭い目で画家自身が髪をとき、体をなめるように洗っている。レンブラントもロンドンのきまぐれな光加減で、あれほど絵の調子がかわるということを思う。画家はどの光を表現したのか?自分の好みはあるけど、わからなかった。あっという間の1時間。

 次はテートモダンへ。ここは書くことがない。朱に交われじゃないけど、モネもルオーもピカソも「退廃」に紛れて同じようにみえる。茂木さんは「作ろうというエネルギーがある」というけど、何でもかんでもやればいいというわけじゃないように思う。醜いアートは「美」ではない。人を不快にさせるだけ。印象派の必死で眼を鍛錬し、色を対象を、表現した時代はもうない。

 くたくたになりホテルへ戻る。見る側に体力を必要とするのを改めて痛感する1日。


9月1日(火)

 今回の旅の目的「大英博物館」へ。日本美術の専門家クラークさんや、修復専門の杉山さんに貴重なお話を伺う。世界中の遺産は世界の人々により支えられている。だから日に2万人もの人が来るのであろう。もうすぐ公開される「土偶」の展示に偶然立ち会えた。土偶好き、というと変かもしれないけど日本が誇れる一級の美術遺産。ずっと展示に立ち会いたかった。そして縄文の質感を確かめたかった。



 カフェに移動し茂木さんと話す。写真は太田プロに撮ってもらった。二泊では短いとか思っていたけど、長いから意味があるというわけでもないことにも気付く。昼に飲茶を食べようと店に行くが、モダンチャイニーズというのだそうだが、紹興酒はないしビールはエビスだけというのに閉口する。モダンっているのはやっぱり「退廃」だね。ロンドンで泊まったホテルにベルギーのラガーしかなかったのと同様、なにか勘違いしているんじゃないかな?そんなことがモダンじゃないよ!ロンドンは方々でビクトリア時代の土管が掘り起こされ、ガラス張りのビルが建つ。このままだとロンドンがロンドンじゃなくなるんじゃないかな?禁煙法でパブは閉まり人々は店の外で喫煙。これではなんの意味があるのかな?

 飲茶はほどほどにして、畏友昭夫が住むケンジントンへ。僕も三ヶ月住んだ町は昔の姿だった。茂木さんは夕方のフライト。ここから直接ヒースローへ。別れた僕ら一向は、昼の雪辱?に再び中華を食べにBAYSWATERへ。北京ダックをたらふく食べて機嫌が直る。その頃きっと茂木さんは、機内でパソコンに向かっているんだろう。

■茂木健一郎さんブログ“クオリア日記”:関連記事「白洲信哉になった」「帰国


9月3日(木)

 ロンドンからユーロスターでパリに入る。キングクロス横のSTパンクラス駅から出発するのだが、モダンな駅だった。以前は南部のウオータール駅から出ていたが、市内にトンネルを掘りここが始発駅になる。なんだか無駄なことをしているようにも思うけど、日本が東京駅に集約するというのと同じ感覚なのかな?やっぱりオリンピックにロンドンの歴史が破壊されている。

 トンネルを抜けると曇天の空は、南国にきたと錯覚するくらい光り輝く。パリ北駅に着き地下鉄でサンジェルマン・デユプレへ。パリは6年ぶりだったけどロンドンのような変化はない。街並みは変わらず、以前より英語も通じる。でも連戦の疲れも出て早々に引き上げ早めに夕食。

 今日は新しくなったオランジェリーへ。モネの「睡蓮」と長い時間過ごす。好きな場面を写真に写し、地下のPaul Guillaumeコレクションも堪能。レベルの高いそしていい展示だった。ここでも自然光の威力を体現する。二度と同じ色はないし同じ感動もない。写真機には露出があるけど、明るさが急に暗くなる過程の一瞬がいい。光とは偉大である。



 コンコルドから凱旋門へ、エッフェル塔も大きくなる。フランクリンルーズベルトから地下鉄に乗り、LE MUETTE駅そばのマルモッタン美術館へ。ここにもモネが沢山あった、けど同じ「睡蓮」もピンきり。この違いは画家の体調なのか?こちらの好みだけなのか?先程のオランジェリーのことを思い出す。「日の出^印象」もモネの代表作といわれているが、僕には若書きにしか思えなかった。

 コンコルド

 その足で約束のオペラ座へ。パリ在住何十年の坂本さんの友人MITUKOさんと会う。楽屋口から入りバックヤードを彼女の友人フィリップさんに案内を頂く。写真で明らかだけど演目を支える縁の下の充実ぶりに眼を見張る。しかもみな国家公務員。日本で言うなら能楽および歌舞伎の衣装保全ほかほかすべてをやるのである。衣装に触れるフィリップさんの手つきが素敵だった。










 オペラの染色場




 その晩はフードジャーナリストであり、小学館の101新書「パリジャンは味オンチ」の著者でもある彼女にDEEPなパリを案内いただく。フランス人が来ないトマトジュースをベースにしたカクテル、ブラッディ・メアリーの発祥のパブ、これはよかった。ベトナム料理がいいとか、チーズの美味いとこお願い、とか初対面だと思っていたら六本木のバーであったこともあったそうな。二人は「におい」の話で盛り上がる。香水はにおいをかくすため、というまことしやかな説があるけど、女性は隠すのでなく自分の匂いを強調するために自分にあった香水をつけるのだそうだ。男女間で匂いは大事だそうで、彼女の長男は日本の女性は無臭だから魅力なく、魚臭いともいうという。目玉焼きが魚臭いとは初耳だったけど、確かに卵の餌は魚の粉末?なのかもしれない。ソース大国の人々は敏感だということだ。ちょっとショックでもあったけれど。

 フィリップと
 MITUKOさん


9月4日(金)

 今日も朝から美術館巡り。モルソー公園横にあるチェレヌスキー美術館へ。再来年ここで「永青文庫展」(細川美術館)が開かれる。アジア美術のコレクターだったかたの美術館らしく中国のものは充実している。この後に行くギメ美術館より質は高いようにも思う。

 チェレヌスキー美術館

 凱旋門の駅で降り、Dapper美術館。そしてその足でギメへ。セーヌ川までくると向かいに新しく建ったBranly美術館。

 エッフェル塔
 その脇がBranly

ここは素晴らしい!展示品の質は高く展示の仕方や構成、ちょっと興奮した。暗い先にドキッとするような面があったり、振り向くと見たことのない木像に魂がある。これは神像ではないか!オセアニアの小さな島々に残るものは、我々の祖先とも感じる。あの小さな小船に乗りたどり着いたのであろう。

 Branly 我々の祖先


 Branly 面の展示は
 見るべきものがある


 Branly やばい!!!




 迷路のような館内、半日いて三周したが多分全部をみてはいないと思う。これはシラクさんの置き土産と言われるが、日本および美術を愛した大統領らしい「美」の根幹を表現している。ここの展示物はこのために買い集めたものもあるとは思うが、ほとんどはルーブルの地下倉庫に眠っていたものだそうだ!まだあと一つや二つは出来るともいう。さきのオペラ座にしても文化に対する政治家の、そして国民の民度と奥深さが違うのであろう。「残るのは文化だけである」。金もかかるが人は死んでもモノは永遠である。そのときの国家指導者の達観、今の人はあまり熱心ではないそうで人気もないという。

 予定外の足止めでポンピドーもピカソ美術館もやめた。なんだか満足したことも理由である。明日は夜のフライトなのでオルセーくらいはとも思うが…でも結局これをパリから送ることは出来そうにない。茂木さんにも馬鹿にされたけど、泊まったホテルにあるというWIFIという無線にもつなげなかった。週刊ポストの中島さんから「早く更新してくださいよ」とメールを受け取るが、僕だったそうしたいんだ!


9月5日(土)

 朝眼が覚めて何かが足りない。教会のステンドグラスである。どうもあれを見ないと欧州に来た気がしないので、ノートルダムとその隣の教会へ。何度目だけど朝は正面から日が入る。文字の読めない人の布教のためのものというが、経典とか意味とかはあとでくるもので、自然への畏怖が根幹にある。









 やっぱりオルセーには行かないと、と思いセーヌ川沿いを歩いていく。五階に印象派が固まってあるが、ほうぼうに散らばっている。だが、五階は自然光が入り時々に変化がある。モネのルーアンの聖堂が三枚並んでいるのは圧巻。光の移り変わりの恩恵がある。それに比べるとゴッホはそれほどでもない。若い頃から三枚の自画像を比べたり、ルノアールのアルジェリアの風景とか、小林展で幾度となく読んだ祖父の文章と重ねあわせた。ゴーガンの最後の画「雪のブルターニュ」をみたかったがないようだった(どこかにあったのかもしれないけど)いずれにしても久しぶりに画を堪能した。あとはワインを捜して帰るとする。ARNYS買おうと思ってのぞいたけどとっても手が出なかった!

 ルーアンの聖堂














平成21年9月1日(火)
週刊ポストに、“白洲信哉 続ニッポンの流儀 第33回 〜ねぷた〜”が掲載されました。





平成21年9月1日(火)
家庭画報に「生誕100年に向けて:祈り−白洲正子が見た日本人の信仰〜第七回」が掲載されました。





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