白洲信哉 SHIRASU SHINYA OFFICIAL WEBSITE


平成30年1月28日(日)  |固定リンク

  明通寺
深沙大将立像

 この度、月刊「目の眼」編集長を辞任しました。約五年、毎月心血を注ぎ、我が子を世に出すようにやってきたつもりですが、編集責任者としての任を果たせなくなりました。突然の事で、読者や広告主の皆様。とくに定期購読してくださっている愛読者のかたがたには、本誌において離任の挨拶もできず、こうしたかたちになりましたこと、大変申し訳なく思っております。また、これまで、執筆や取材先など、本誌の制作に携わってくださったすべての皆様に感謝申し上げます。

 今後は別なかたちで、骨董古美術及び日本文化全般の普及につとめて参りたいと思っておりますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。以下、責了を果たせず、掲載にいたらなかった三月号のまえがきを記しておきたいと存じます。


まえがき

 仁和四年(888年)、宇多天皇(867−931)は、先帝光孝天皇の遺旨を受け、新寺院の落慶供養を行い、元号から寺号を仁和寺と称した。897年天皇は、その子醍醐に突如譲位し、二年後東寺長者益信を戒師として出家得度、法皇となり、仁和寺の伽藍一郭に、御住房を建て移住した。法皇の住まいする僧房を「御室」といい、その後も天皇の皇子や、宮家出身者らによって住職「門跡」が受け継がれ、門跡寺院筆頭として「御室」の名が後世まで伝えられ、地名になったわけである。

 表紙に「孔雀明王図」を据えたのは、仁和寺を最も特徴付ける修法が、「孔雀経法」であったからだ。天変地異の消除や、安産祈願などの効験があるとされ、歴代門跡が修法した大法だった。宇多法皇が得度後も真言密教の修行を続けられ、東寺において「両部灌頂」を受け、真言宗第十二世阿闍梨の位に就いたこともあり、仁和寺は真言密教寺院として歩んできた。  鎌倉幕府滅亡後、建武の新政(1333)を行なった後醍醐天皇は、真言密教に深く帰依された異色の帝として殊に知られている。父帝の後宇多天皇が高野山を詣で、仁和寺で落飾されたことの影響であろうか。後醍醐は、醍醐の治世(延喜)を取り戻し、武家の手から実権を回復することを目指していた。

 本年は明治維新150年、節目の年だ。京から江戸へ。皇室、貴族、大名家をはじめ人、モノ、金、芸能に文化など、いまに続く東京一極集中の幕開けだった。たびたび記しているが、神仏分離に代表される様々な一神教化の施策によって、神様は合祀され、仏は稀釈されていく。興福寺の僧侶が、春日社の神主に転向したのはその代表例だが、皇室とて影響は避けられず、御所のお黒戸にあったご位牌は、泉涌寺にうつされたままだ。仁和寺では、第三十世御門跡であった純仁親王は還俗し、倒幕軍で活躍(のちの小松宮彰人親王)したが、明治四年には、御所号、門跡、院家などの呼称は廃止される。

 維新後の近代国家の歩みや、戦後民主主義の歴史、その全てがマイナスだったとは思わない。が、皇室は、神道儀礼だけを続けていくのであろうか。日本には世界でも稀な多神教的な価値観、神仏が習合した千年を超える歩みがある。

 宇多天皇の時代、遣唐使は廃止され、勅撰集『古今和歌集』にはじめて「ひらがな」が採用され、漢詩漢文の輸入文化から、所謂国風文化への転換期だった。維新以降の欧米からの輸入文化偏重から、そろそろ日本的な個性を、顧みる時期が来たと思う。今上天皇譲位にあたり、もっと広い視野でこの大事業を考えたらどうだろうか。仏門へ、と言っているわけではない。歴代上皇が文学芸術の庇護者であったように、京へお戻りになるチャンスだと僕は思う。東京一極集中は国のかたち、そのバランスを大いに欠いており、文化庁が移転するくらいではどうにもなるまい。

仁和寺と御室派のみほとけ 東京国立博物館にて3月11日まで。
写真は明通寺の逸品です。中嶌ご住職お元気でしょうか?


  明通寺
降三世明王立像





平成30年1月1日(月)  |固定リンク

 

目の眼」2月号、発売されました。東京国立近代美術館で3月21日まで開催中の「没後40年 熊谷守一生きるよろこび」展にあわせ、熊谷守一の独特の書と墨絵を取り上げます。油絵に注目される熊谷守一ですが、書と墨絵も独特の世界観で親しまれています。また、二大特集として中国の俑も取り上げます。大阪市立東洋陶磁美術館で開催される「唐代胡人俑−シルクロードを駆けた夢」展のご紹介と、古美術界でもっとも俑に詳しい川島公之さん(繭山龍泉堂代表)に日本人に愛でられてきた俑を紹介していただきました。




平成29年12月1日(金)  |固定リンク

 

目の眼」1月号、発売されました。特集は「新しい年の李朝」。李朝陶磁の世界をご案内します。表紙から渾身の作でして、内容盛り沢山です。読み応えもあるのでゆっくりめくって下さい(笑)。連載「美の仕事」は、ギタリストの村治佳織さんが、ギャラリーマリさんへ。




平成29年11月1日(水)  |固定リンク

 

目の眼」12月号、発売されました。特集は「池坊555年 古器に生ける」。日本のいけばな文化を読み解きます。東京国立博物館の運慶展「撮りおろしで堪能する運慶の造形美」は、前号に続く2号連続企画です。




平成29年10月1日(日)  |固定リンク

 

目の眼」11月号、発売されました。特集は「錦秋の京都 国宝めぐり」です。京都国立博物館の国宝展と東京国立博物館の運慶展が見所です。表紙の神護寺三肖像画三点が並ぶのは23年ぶりとのこと、運慶は現地撮りおろしもしています。




平成29年9月1日(金)  |固定リンク

 

目の眼」10月号、本日発売です。特集は「金沢〜富山 民藝の里を旅する」です。福光・城端・井波といった金沢から富山へと抜ける山あいの里々では、「信仰」と「生活」が一体となった独自の文化が形成されてきました。そこに民藝の本質を見た柳宗悦は、河井寛次郎棟方志功らとともにこの地を訪れ、後年「美の法門」を著すこととなります。今回は民藝の揺籃地ともいえるこのルートを、批評家の若松英輔さんと一緒に旅してみました。




平成29年8月1日(火)  |固定リンク

 

目の眼」9月号、本日発売です。創刊40周年の記念特集は「勾玉 日本美のはじまり」です。縄文時代から古墳時代にかけて作られた勾玉は、古代日本を代表する神秘の工芸品、日本で生れた独特のデザインといわれています。装身具、祭器、威信財など様々に考えられる用途と日本独特の形の由来は諸説ありますが、美しい玉の力を信じ、魅了されていたことは間違いありません。縄文人がヒスイを発見し、世界最古のヒスイ製品を生み出した場所、新潟県糸魚川市、また大きな勢力を持って勾玉を生産した出雲の玉造りをはじめ、東京国立博物館の国宝勾玉、出雲大社の重要文化財を始め、各地の名品を撮りおろしで紹介します。勾玉をみることで、日本の美の源流を感じていただけたらと思います。




平成29年7月1日(土)  |固定リンク

 

目の眼」8月号、本日発売です。特集は「尚 王家の末裔 野津圭子さんと歩く 琉球〜沖縄」。日本の西南端に位置する沖縄県。いまでは日本のみならずアジア有数の観光地として人気が高い。この地は、中国・東南アジア・日本をつなぐ要に位置し、古来東アジア交易に欠かせない寄港地として、また独自の文化を形成した琉球王国として450年あまりの繁栄を築いた。今回は琉球王家・尚氏の歴史と伝統を受け継ぐ尚圭子さんを案内人に琉球王朝の遺物をたどりながらその美意識を体感していただきたい。




平成29年6月1日(木)  |固定リンク

 

目の眼」7月号、本日発売です。特集は「発見! 古美術の街 名古屋」。関東と関西のあいだに位置し独自の文化圏を形成する中部・東海地方。古来より農産物が豊かで交易も発展した東海地方はまた一大窯業地としても栄え、猿投・常滑・渥美・瀬戸といったやきものを全国に流通させました。その中心地である名古屋は近世以降「茶どころ」と謳われ、現代にいたるまで文化の香り高く古美術との縁も深い地です。今回は「美の街」という視点から名古屋の知られざる一面を紹介します。




平成29年5月1日(月)  |固定リンク

 

目の眼」6月号、本日発売です。特集は「びいどろ ぎやまん 儚いかたち」。江戸時代、日本ではガラスを、「びいどろ」、「ぎやまん」と呼び、珍重していました。外国のものと比べると、少し頼りなげで、しっとりとした色合いのガラスです。その美しさに魅せられた蒐集家・故大藤範里氏のコレクションが、現在、滋賀のMIHO MUSEUMで展観されています。全国で開かれている展覧会で出会える、美しい和ガラスの世界を巡りましょう。




平成29年4月1日(土)  |固定リンク

 

目の眼」5月号、本日発売です。特集は「名碗を創造した茶人たち」。今春、三七年ぶり大規模な「茶の湯」の展覧会が、東京国立博物館で開催されます。そこで、展覧会のご紹介とともに、「目の眼」独自取材を敢行。 武者小路千家十五代家元後嗣・千宗屋さんに「茶の湯」で愛でられてきた名碗の魅力を教えて頂きます。茶が伝えられた室町時代から現代まで、僧、貴族、武家、商人、数寄者たちが茶を楽しみ、名碗を伝えてきた歴史に思いを馳せましょう!




平成29年3月1日(水)  |固定リンク

 

目の眼」4月号、本日発売です。特集は「日本を護った西大寺 叡尊の祈り」。西大寺は天平時代に創建されて以来、1250年にわたって奈良の都を護り続けてきましたが、平安時代に一時荒廃します。その西大寺を復興・再生させたのが、今回紹介する叡尊とその弟子たち。今回は全国三カ所で開催される展覧会にあわせ、西大寺と叡尊をたどりながら、奈良〜平安〜鎌倉の仏教の変遷の様子、その過程で生まれた仏像、金工品を中心とする法具などの名品をわかりやすく紹介します。




平成29年2月1日(水)  |固定リンク

 

目の眼」3月号、本日発売です。特集は「古唐津と初源伊万里」。今春、東京丸の内の出光美術館で、十三年ぶりとなる古唐津の展覧会が開催されます。総数約三百点という大コレクションの中から、約一八〇件を展示。担当学芸員の柏木麻里さんに、古唐津の魅力と出光コレクションの見どころを解説して頂きました。また、勝見充男さんから「一緒に初源伊万里を見極めに行かないか」と誘われ、酔った勢いで有田へ。はたして、初源伊万里とはどんなものなのか、読者と一緒に追いかけて行きたいと思います。




平成29年1月1日(日)  |固定リンク

 

目の眼」2月号、12/29(木)に発売されました。特集は「白洲正子が愛した春日 おん祭 春日大社 常若の聖地」。観光客でにぎわう奈良公園の東、春日山は古来から神の山として崇められてきました。その周囲の春日野は神域として原始の森が残り、神を祀る春日大社があります。平成二十八年、奈良・春日大社は「式年造替」(しきねんぞうたい)と呼ばれる二十年に一度の社殿建替・修繕が行われました。式年造替は今回で六十回目、千二百年もの間、続けられてきました。毎年十二月に行われる「春日若宮おん祭」では神楽、舞楽、能など、様々な芸能が奉納されます。長い間、神域の森深く秘されてきた春日大社の古神宝と信仰によって生まれた美術をご紹介します。

 


また、東京銀座の松屋で特別展「白洲正子ときもの」が1月16日(月)まで催されます。小特集として「白洲正子ときもの」展を紹介します。





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